夏川現代語訳05 啓発録

●啓発録

著者 橋本左内
版元 致知出版社
ページ数 194
価格 本体1540円
リンク https://www.amazon.co.jp/dp/4800911141

■著者紹介 橋本左内(1834‐1859)
幕末の福井藩士であり、幼少から蘭学や医学を学び、改革派として知られた藩主・松平慶永(春嶽)の下、若くして藩政改革に携わる。
13代将軍・家定の継嗣問題が発生したとき、西郷隆盛と一橋慶喜の擁立に尽力。
結果、大老・井伊直弼と対立することになり、「安政の大獄」と知られる弾圧によって捕縛、小伝馬町の牢獄にて斬罪に処される。

■本の概要 『啓発録』
その言動や理論で吉田松陰、西郷隆盛などの幕末の英雄たちに影響を与えながら、26歳という若さで刑死することになった橋本左内。
『啓発録』は若きサムライたちに指針を示そうと、彼が15歳の時に書き上げた書です。
その分量は今日の本にして40ページという短いものですが、人生の初心者に志を解く書として長く愛されてきました。昭和の初期まで本書は学校で必ず読まされる書物だったのですが、戦後、軍国主義を想起させる内容として排除されます。
しかし本書が教えるのは、ブレない人生指針を持つことの大切さであり、日本人の強さを思い出させる書として注目されるべきものです。

■目次
第1章 『啓発録』現代語訳
1 去稚心……「幼き心」など、今ここで捨て去ってしまおう
2 振気……「負けたくない!」と、心を奮い立たせる
3 立志……大志を掲げることで、人は自然に成長していく
4 勉学……実践をともなった「本物の勉強」をする
5 択交友……馴れ合いにならない、本当の「友」を選ぶ
第2章 『啓発録』原文
第3章 「学制に関する意見文書」
第4章 「為政大要」
第5章 松平春獄撰「橋本左内小伝」

■本の読みどころ

かつて日本には、こんな若者がいたんだな……。
『啓発録』を読み、私たちが真っ先に感じるのは、そんな我が国の過去を羨望する思いではないでしょうか。
「この日本では太平の世が長く続き、武士の気風はずいぶんと脆弱なものに陥ってしまった。武門の家に生まれながら武士道をないがしろにし、皆、ただ地位のみを望む。欲望に溺れ、利益をむさぼり、強い者ばかりになびくような武士が、多くなってしまったのだ」
夢見る若き侍の言葉は、彼らより年上だった志士たちの心を動かし、大きな志をもって国の未来を変える動きとなっていく。
残念ながら左内は26歳の若さで散ってしまいますが、その夢は終わりませんでした。
彼の死から17年ののち、明治になった日本で最後の戦いに敗れた西郷隆盛が自決したとき、彼が携えていたのは橋本左内からの手紙だったと言われます。

橋本左内ほど、日本において「武士道精神」の再興が必要なことを強く主張した人物はいません。
時代はペリーが来航し、開港も必然になっているころ。
欧米の列強諸国と肩を並べるには、日本の特徴である武士的精神こそ、私たちが生かすべきものだと考えていた。
まさに彼の青臭い言葉にほだされた人々が、日本を欧米に劣らない強国に変えていったのです。
ところが現代、かつての日本人の精神的支柱だった武士道は消え去り、橋本左内の名も多くの人が忘れています。
だからこそ、私たちは彼の言葉にもう一度耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。

本書には人生の指針書である『啓発録』に加え、橋本左内が自身の教育改革の論をまとめ藩に提言した「学制に関する意見文書」。
さらに未完の著ではありますが、日本の未来について考察した「為政大要」も掲載。これにかつての上司であり、藩主であった松平春嶽による左内の紹介文も合わせ、1冊にまとめています。

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