夏川現代語訳08 超約版・貞観政要

●超約版 貞観政要

著者 呉兢
版元 ウェッジ
ページ数 200
価格 本体1210円
リンク https://www.amazon.co.jp/dp/4863102488

■著者紹介 呉兢(670‐749)
唐代の歴史家。名君とされた唐の皇帝・太宗の言行を記録した文書を再編集し、10巻4篇からなる「貞観政要」をまとめ上げた。
太宗(李世民)は、616年に父親の李淵とともに、悪政を行なってきた隋の国を倒し、唐の王朝を興す。その後、兄との対立を経て626年に皇帝となった彼は、敵対してきた勢力と和解し、空前の平和時代を実現。その治世は「貞観の治」と呼ばれた。
太宗の死後、武則天の即位によって国は混乱するが、息子の中宗は再び唐を再建。その頃、当地の手本としてまとめられたのが「貞観政要」であったとされる。

■本の概要 『貞観政要』
中国の王朝時代でも、最も優れた皇帝の1人とされる皇帝・太宗。兄と弟を相手に血みどろの内戦を勝ち抜いた彼は、二度と混乱の時代を招くことのないよう、常に自身を戒める統治の方法を実践する。
そのために太宗は敵側の側近を自分の部下として採用し、彼らの真摯な陳言を常に聞き、やりとりをすべて記録することにする。
この記録を編纂したのが『貞観政要』であり、その内容のほとんどは、皇帝と部下が「国をよくするために何をすべきか」を真剣に話し合った議論となっている。
その内容は政治や外交のみならず、人材育成や人身掌握、自己研鑽の方法や人間関係のあり方など、非常に多岐にわたる。
日本では北条政子や、北条義時の後を継いで善政を行なった息子の北条泰時、また徳川家康が本書を手本として統治を行なっている。

■目次
第1章 人の上に立つ者の条件
第2章 強い組織をつくる哲学
第3章 部下を伸ばすリーダーの資質
第4章 上に立つための自分の磨き方
第5章 部下を最大限に生かす法
第6章 有能な人材の見抜き方

■本の読みどころ

基本、リーダーとして組織を束ねる人間は、その組織における競争に勝利した人間であり、いちばんの権力を有していることはもちろん、実力も優秀であることが多いでしょう。
だからリーダーは他人の話を聞かなくなるし、唯我独尊ですべてを自分の思い通りに動かそうとします。結果、上司と部下は対立し、そこから組織は崩壊していくわけです。
「人の話を聞くこと」の重要性はよく言われながらも、それができるリーダーは、なかなかいない。ところが太宗は、巨大な中国の王朝を束ねる皇帝という立場にもかかわらず、システムとして「話を聞くこと」を実行したわけです。だからこそ、その膨大な記録を集めた本書は「理想のリーダーのあるべき姿」として、国家の統治者や企業のマネジメント層、またスポーツのチームをまとめる監督たちに愛されてきました。

本書が目指すリーダーの姿は、この本をバイブルとして日本を変えた偉人たちの行動を見ればわかります。
鎌倉時代の北条泰時は、「御成敗式目」という武士のルールを定め、これまで勢力争いをしてきた武士を、国家における「民衆の守り手」という立場に変換しました。
徳川家康も、「藩」という地方分権制をとることで、戦国の統一戦争を終わらせました。
力でもって人を動かすのでなく、相手に話を聞いて理解し合うことで、本当に組織を強くすることはできる。
本書はそんなリーダーシップのあり方を教えてくれる、特異な世界的名著と言えるでしょう。

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