
本日の夜は、「賢者の会」を開催!
「偏愛」をテーマに、すでに毎月、皆さんに
文章を書いてもらう形になっていますが、
もう4回目ですね。
「旅」と2回やった「食」に続き、
今回は「ファッション」というテーマについて
思い思いに好きな文章を書いてもらいました。
このテーマこだわりのある人もいるし、
そうでない人もいる。
服の種類、ブランド、色、アイテム、
ライフスタイルなどなど。
いろんなアプローチが考えられますよね。
で、私が書いたのは、
「編集者バッグ」について。
この言葉がどれくらい認識されているか知りませんが、
以下、私の文章を紹介しましょう。
次回、11月のテーマは、
「本を読むこと」について。
結構、勉強会の核心に近づいていますよね。
本日は皆で事業をやる壮大な夢まで
話は進みました(笑)
「自分も書きたい」とか、
「話を聞いてみたい」という方は、
ぜひ夏川にお知らせください!
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「編集者バッグ」はどこへ行った?
「編集者バッグ」という言葉を、今の編集者さんは知っているのだろうか?
ひょっとしたら20代から30代のころの、私の周りだけだったのかもしれない。
でも、とくに男性の単行本編集者は、心当たりがあるのではないだろうか。
それくらい、当時は大勢の人間が同じタイプのバッグを使っていた記憶がある。
もちろん、「編集者バック」という特別な商品があるわけではない。
多くは吉田カバンの「ポーター」というブランドになるが、
肩から下げられ、A4くらいの書類が入る分厚い四角形のもの。
値段は4万から5、6万と、そこそこの高級品ではあった。
なぜ、皆がこのカバンを使うかといえば、打ち合わせに持っていきたい荷物による。
まず編集者は、ゲラをカバンの中に入れたい。一般読者の方のために説明すれば、ゲラというのは校正紙。
2ページ見開きをコピーにしたもので、200ページの本なら、100枚の書類になる。
かつての出版好況期であれば、4〜5件の仕事が同時並行しているから、
2冊分くらいのコピー紙の束を入れておきたい。
さらに書籍がある。企画用の資料、会いにいく著者の本、それに趣味で読む本……と、
4冊くらいカバンに入っていたらと思う。
それに加えて、編集者のキャリア後半は、やはりノートパソコンも持っていきたい場面があった。
強引にでも、なんとかカバンにしまい込む……。
実をいうと、これらカバンに入っている品の数々が、役立つ機会はほとんどない(笑)
だいたい海外出張ならともかく、打ち合わせで出かけるのは、
せいぜい1時間の移動なのである。休憩中や時間潰しの喫茶店でも。
それほど多くの時間を費やすことはない。
しかも、それだけ“暇つぶしグッズ”を持ちながら、
いざヒマな時間ができたら、ほとんど目をつぶってウトウトしていたりする……。
重い荷物は、ほとんど無駄なのである。
なのに「ひょっとしたら読みたくなるかも」という心配のみで、
ついつい肩に負担をかけながら、重い荷物を持って歩き続ける。
そうして鍛えたせいか、私は50代の現在まで、肩こりになったことがほとんどない。
ところが、あるときから、この「編集者バック」は、ほとんど使用されなくなった。
まず外出自体が少なくなる。それにゲラはすべてデータ化し、スマホに収まってしまう。
情報収集もほとんど本からでなく、スマホからだ。
すると必要なのは、趣味で読む本だけになる。
いまの「なんちゃって」な編集者バックは使っているが、今どき大きなバックを持つのは邪魔なだけだろう。
でも、思えばそんな時期から、外出は楽しくなくなり、出版業界の低迷も始まった気がする。
編集者バッグに入っている情報の、何億倍もの情報に今はスマホからアクセスできるが、
移動中にそれを活用できる人はあまりいないと思う。
むしろ閃き力は、どんどん落ち込み続けているのではないか。
編集者バックは、ある種、「いつでもどこにでもマイデスクがある」という
1つのビジネススタイルになっていたのだろう。
それは情報端末があることと意味はまったく違う。
どんなふうに仕事をしているか、どんなふうにそれを表現しているかという
「ファッション」だったのである。
ならば一人の著作者として、私は「編集者バック」をやはり使い続けたい。
持つ機会が減ったとしても、である。