夏川現代語訳07 マキャベリの「君主論」

●マキャベリの「君主論」

著者 ニッコロ・マキャベリ
版元 ウェッジ
ページ数 212
価格 本体1430円
リンク https://www.amazon.co.jp/dp/486310183X

■著者紹介 ニッコロ・マキャベリ(1469‐1527)
イタリア、フィレンツェの生まれ。
15世紀末、メディチ家が失脚した後のフィレンツェ共和国の外交官。
強国フランスや、ローマ教皇の下で総司令官を務めたチェーザレ・ボルジアなどと渡り合う。
メディチ家の復権後、謀反の疑いをかけられ失職、拷問なども受ける。
その後は釈放され、山荘に隠遁するが、公職復帰を希望して活動。そのとき書いた書物が「君主論」である。
のちに彼はメディチ家から認められ、顧問として活用されるが、再びメディチ家が追放されることにより失職。翌年に病で急死。
「類まれなる名声に相応しい賛辞を受けなかった人物」としてイタリアの歴史に刻まれることになる。

■本の概要 『君主論』
マキャベリズム=国家や組織を守るため、リーダーはときに卑劣な手段をも用いるべきとする考え方。
そんな言葉を生み出した本書は、「悪の書」と批判されながらも、現代まで一貫してリーダーの指南書として活用されてきた。
本書を座右の書とする政治家は、日本の首相にもいるくらいである。
非情な手段をも推奨している本書であるが、間違っていけないのは、マキャベリは決して暴力を推奨していないし、独裁者になることも薦めていない。
利益と信頼で味方を作りつつ、一方でわかり合えない敵対者を合理的に排除していく。
その理屈は常に戦略的であり、人間心理を深く理解しているからこそ導かれた結論である。
厳しい時代にリーダーして人の上に立つ人間にとって、本書は避けて通ることのできない必読書だろう。

■目次
1 王はいかにして君臨するべきか?
2 王家の血があれば、並の器量でも構わない
3 他国を征服するときの心得とは?
4 強大な王国ほど、支配するのは容易い
5 民衆を真の「自由」から遠ざけよ
6 王国を自らつくり出すときの原則
7 力なき者が、君主としていかに国を治めるか
8 君主はどこまで残虐であるべきか?
9 貴族と民衆に対し、王はどう接すべきか?
10 城塞と人心により、鉄壁の守りを築く
11 落ちぶれていたローマ教皇が力を取り戻せた理由
12 王は傭兵を用いず、自ら戦場に立つべきだ
13 「最強の軍隊」のつくり方
14 君主は戦争の方法を学びなさい
15 悪徳をすすんで受け入れよ
16 君主たるものケチであれ
17 冷酷になれ、そして恐れられよ
18 正しい「他人のダマし方」
19 侮られるな、憎まれるな
20 より強固な国を築くために、六つの指南
21 味方すべき相手、敵対すべき相手、中立を保つ相手
22 君主は誰を「相棒」に選ぶべきか
23 取り巻きたちの甘い言葉に気をつけよ
24 凪のときこそ嵐を思え〜小さな国の戦い方
25 運命を巧みに乗り切る方法
26 私、マキャベリが、最後に伝えたいこと

■本の読みどころ

目的を達成するためには、どんな卑劣な手段をも、ときには選ばなければならない。
他人を欺き、恐怖させ、人の心理を巧みに操り、自身の防御を徹底的に固めよ……。
本書で解かれるリーダーシップのあり方は、正当なビジネス書に慣れた私たちからすれば、あまりに衝撃的で、野蛮なものに見えることでしょう。
しかし、どんなに正論をこちらが物事を実行しようとしても、世の中には理不尽を要求してくる人はいる。
いくら誠意を尽くしても裏切る人はいるし、こちらの話をまったく聞こうとしない人間もいれば、自分の要求さえ通れば、人が傷つくのを気にしない人々もいるわけです。
そんな現実世界と向き合ったとき、私たちはどのように大切な仲間を守り、国家や企業を成長させていけばいいのか?
悪の書とか、裏切り者の書と言われながらも、本書が長く名君や良識あるリーダーに読まれてきたのは、正しいことを行なうためにこそ、一方でリーダーは仲間を守るため、敵対する者に対しては狡猾になる必要性があったからでしょう。

マキャベリが生きたルネッサンスの時代、彼の故郷である都市国家フィレンツエは、隙あればその富を奪おうとする、フランスやスペイン、ドイツ(神聖ローマ帝国)や、ローマ教皇領、ヴェネチア、トルコなど、強力な国々に囲まれていました。
まさに彼らが生き残るためには、狡猾な知恵が必要性であったわけです。
そんな状況は、どこか現代のビジネス社会に似ているのかもしれません。
自分や自分の大切な仲間たちを守るため、本書は覚悟して読まねばならない名著と言えます。

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