夏川現代語訳09 超約版・戦争論

●超約版 戦争論

著者 クラウゼヴィッツ
版元 ウェッジ
ページ数 192
価格 本体1210円
リンク https://www.amazon.co.jp/dp/4863102550

■著者紹介 カール・フォン・クラウゼヴィッツ(1780‐1831)
プロイセン(現在のドイツの一部を占める国)の軍人であり、軍学者。
ナポレオン戦争に将校として参加、1804年の「アウエルシュタットの戦い」では20代にして大隊を率いて参戦するが、フランス軍に包囲され降伏。翌年の7月まで、パリでの捕虜生活を余儀なくされた。
ベルリンに戻ったのちは、プロイセン軍のみならず、ロシア軍にも戦略担当として参加。その傍ら執筆も続けていた。
クラウゼヴィッツは50代にして病死するが、膨大な原稿を夫人が多くの協力者の助けを経て編集し、『戦争論』とし1830年に出版されたものである。

■本の概要 『戦争論』
『孫氏の兵法」』と並び、軍事戦略の古典として詠められているのが本書。
しかし孫子とは異なり、「どういう場合に戦争を行なうのか」など、政治目的の立場からも書かれているのが特徴である。善悪を問うのでもなく、また単に勝つための手段を考察するのでもなく、「戦争に巻き込まれる側」や「戦争という手段を余儀なくされた立場」が、「どのようにこの問題を乗り越えるか」という点で本書は平常な国のリーダーにも広く読まれる本となっている。
とくに著者のクラウゼヴィッツは、ドイツ統一前のプロイセンという“小国”に属し、ナポレオンの大軍に立ち向かわざるを得ない立場で戦争を経験している。
したがって本書には「弱者が強者にどのように向き合うか」という方法論に優れ、「守る戦い」の徹底や、奇襲攻撃、また味方を増やしていく外交戦術の必要性は、現代のウクライナ戦争などでも実際に活用されている。

■目次
第1章 戦争とは何か
第2章 「戦術」と「戦略」
第3章 「防御」と「攻撃」
第4章 勝利に必要な「戦闘力」
第5章 部下を率いる資質
第6章 歴史に学ぶ勝利の本質

■本の読みどころ

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけに、戦争にとって他人事でない問題になりました。
事実、今日まで世界のどこかで戦争は繰り返されているわけです。私たちは第二次世界大戦での敗戦以後、ただ無関心に目を背け続けていました。
19世紀に書かれた『戦争論』は、そんな私たちが避けてきた「戦争」を理解するために書かれた、世界で最も広く読まれている書物でしょう。
当時はミサイルどころか、飛行機や軍艦さえなかった時代。それでも戦争を理解し、戦略を立てるために、さまざまな側面から活用されているのです

本書の導入を読めば、大前提として「戦争とはケンカであり、暴力を行使して相手を打ちのめすこと以外の何ものでもない」という原則から始まっています。
つまり、クラウゼビッツも戦争を好んでいるわけではないし、肯定しているわけではない。
しかし現実に国家間の対立が存在する以上、戦争する事態は起こりえるのです。
だからこそ、「どのようにして戦争に対処するか」という対策は必要になる。
どこかそれは、私たちが現実世界で生きていくために、迫り来る火の手を振り払う策が必要になるのと似ているように思います。
だからこそ平和を望む人ほど、人と人との共存を望む人ほど、逆説的な本書はぜひ目を通しておきたい名著なのでしょう。

膨大な『戦争論』ですが、手早くそのエッセンスを知るニーズに合わせ、本書はおよそ180ページに省略する大胆な編集を実行。
合わせて私たちがより理解しやすいよう、解説には現代世界の戦争からの事例や、日本の戦国時代の合戦の事例なども豊富に加えました。
名著とは言われながら、多くの読者を阻んできた難解な本書。それを平易にした本書を、この機会にぜひ多くの方に目を通してほしく思います。

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