儚い記憶、「雪だるま」の物語

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雪が降った日の翌日となった東京。

こんな日に私は必ず、外に出ると子供たちが作った
「雪だるま」を探してしまうのですが、
今回は大して積もっていないし、
そもそもが水を多く含む、
シャーベットのような雪でした。

公園でも行けば違ったのでしょうが、
周りの家にはあまりない……。
でも、かなり溶けかけのものを1つ見つけましたね。
弱々しくも、お家の人々を守っている感じです。

この「雪だるま」という、創作物。
雪を丸めて重ねるだけの簡単なものですから、
雪の降る地域では、子供たちが必ずつくります。

ただ、「だるまさん」と結びついた日本と違って、
ヨーロッパでは「雪の妖精」と結びつける話が
多くあります。

たとえば北欧にはジャック・フロストという
霜の妖精の伝承がありますが、
冬に悪戯をする彼らが、
雪だるまに乗り移って遊びまわる姿などが
連想されたんですね。

ただ、妖精化した彼らは、
すぐに太陽の光が溶けてしまう
儚い存在でもありました。

アンデルセンの「雪だるま」の物語を
ご存じでしょうか?

それは家を温めるストーブに憧れてしまった
雪だるまの物語。
家で飼われている犬と仲良くなるのですが、
窓から見えたストーブの近くに行きたくて
仕方がない……。

「でも、君は動けないし、
だいたいストーブのそばになんか行ったら、
溶けて君は消えてしまうよ」

犬は必死に説得するのですが、
雪だるま君の憧れはおさまりません。

しかしその夢は叶うことなく、
暖かい日々がやってくると、
雪だるま君は溶けていき、やがて消えてしまいます。
その体の芯には、
ストーブで使われる火かき棒が埋まっていました。
だから彼はストーブに憧れたんですね。

犬はその棒に向かって、
「君のことは忘れないよ」と優しく言います。

そんな儚い思い出を残してくれる雪だるま。
この消えていく小さな塊にも、
子供たちの記憶に
何かを残していっているのかもしれませんね。

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