賢者の会〜「食」について書くPart2

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9月9日は「賢者の会」を開催しました。
今回は、より「偏愛」を強く出した
「好きな食べ物」について書くテーマ。

皆さんの原稿が集まり、
今回は品評や感想を聞くような場となりました。

すでに初回、「食」について書いた
最初の原稿は、Note上に公開されています。
https://note.com/natsukawagao/n/n87ce31b7feaf

ただ、今回はできるだけ
個人の経験や思い出と離れ、
好きなものについて粘着して語るような
尖った文章を書いてみよう……ということで
パート2の挑戦となりました。

今回、皆さんと議論になりましたが、
たとえば『美味しんぼ』のような物語の場合、
「これが美味しい」を最終的に説明するのは、
案外と簡単です。

最後に皆がそれを食べて、
感動したり、絶賛しているような場面を展開すればいい。
「まずい」という人なんて1人もいない。
物語上ではどんな世界だって、
想像できてしまうわけです。

しかし「食について書く文章」では、
それが通用しない。
それで「これが美味しい」「一番だ」という
主観を正当化するのですから、
ある種強引な「自論」を展開するしかなくなってくる。

この辺がどこまで説得力を持って書けるか。
結構、文章課題としては面白いんですね。

長くなりますが、
あとで私が書いた「コーヒー」についての文は
掲載しておきます。

なお、「賢者の会」では
以下の募集をさせていただきます!

(1)文章を読んでいただき、
感想をいただけたら嬉しいです。
(2)リモート会議に参加できずとも、
「私も書きたい」という方がいれば、募集します!
(3)10月にリアルな場で、皆さんが選んだ
「美味しいもの」を食べるツアーを実行します!

次回の会は、10月14日の夜になる予定です!
ではでは、私の文章を。

  • 「珈琲」を愛し、作家になった人間の、取り留めもない思い

「日に何杯くらい、飲むんですか?」
「たぶん、20杯か。30杯くらいかな……?」
「マジっすか、死にますよ……」
死の犠牲も厭わずに、飲み続けていたもの。何かといえば、コーヒーである。

かつて恵比寿に事務所に構えていた当時、事務所に来て、まずやるべきことといえば、
コーヒーメーカーでコーヒーを作ることだった。
銘柄はその都度、違う。
お気に入りは「シティロースト」かモカを主体にしたブレンドだが、その都度、気まぐれに変わる。
なくなったらまた作り、始終、ストックする。だから量は多くなる。
もちろん、お客さんが来たら、喜んで出す。
紅茶もあるよ。ハーブティーもある。日本茶もあるけど、勝手に飲んでね。
「コーヒー? それならどうぞ」と、完全に差別していた。申し訳ないが(笑)

じつは編集者やら作家になる前から、私はコーヒー好きだった。
「無人島に何か1つ、食料を持って行けるとしたら何を持って行くか?」
という質問があるが、大学の頃から「ラッキーストライクとコーヒー豆」と答えていた。
前者(タバコ)はすでに生活から排除されているが、
後者がなくなった人生など、まったく考えられない。

でも、最近では「ポリフェノールが体にいい」などとも言われるコーヒー豆。果たしてそうなのだろうか?
実際、無人島にコーヒー豆があれば、かなり便利でもある。
なぜなら住処の前に撒いておけば、虫がやってこない。
蟻や蜂は殺せるし、犬族や猫族の野獣に対しても、麻痺毒として使える。

要するに「毒」なのである。
主成分のカフェインは、5ミリグラム〜10ミリグラムで、人を殺すとのこと。
さすがの私も、数時間で4、5杯も飲めば、胃が気持ち悪くなる。

それでも半日もすれば飲んでいるのは、コーヒーの入ったカップが傍になければ、
パソコンに文章を打とうという気にならない。
リモートの打ち合わせでも、コーヒーがないと、なんとなく落ち着かない。
もはやこれは飲料とか、食料という類のものではない。
ほとんど、バッテリーやガソリンに近いものと言えるだろう。

そもそも、この「毒」を、なぜ人間は摂取しようなどと考えたのか?
伝承では、エチオピアのカルディ君なる羊飼いが、
ヤギがカフェインの中毒症状でハイになっているのを見て、自分も試してみたのだという。
それを見たイスラムの僧侶が危険を感じ、豆を取り上げ火に放りこんだら、
たちまち芳香が漂い、2人とも病みつきになったとか。
それって、大麻や覚醒剤レベルでヤバいのでは?

あくまで伝説だが、気づけば西洋の紅茶を飲む人々が技術革新を起こし、
東洋の緑茶を飲む人々が哲学的思想を高めていた近現代。
プルーストだの、カフカだの、ヘミングウェイだの、芥川龍之介だのといった
精神的に問題のある輩たちは、コーヒーで眠れない夜をつなげながら、
誰が読むとも知れない創作活動を続けていた。

バカにしているのではない。そんな非生産的な飲料だからこそ、
コーヒーは作家に必然であり、私はコーヒーを淹れながら、
無駄かもしれない執筆活動を続ける。これは絶対にAIにはできないこと。
だって奴らは、毒なんて飲まないもの!
まあ、紅茶やお茶好きの作家さんには申し訳ないが……。

もっとも事務所を放棄し、家にこもった最近は、
コーヒーもインスタントで済ますことが増えている。
これではいけない!
私の作家としての再生は、コーヒーメーカーを動かすことから始まるのかもしれない。
そうだそうだ、そうに決まっている。

この文章の表紙には、おそらくメーカーでちゃんと沸かした、
美味しそうな真っ黒の不健康な液体が、きちんと掲載されるだろう。

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