
本日はこちらの本の紹介。
佐藤雅美さんの
『覚悟の人』というもの。
(角川文庫)
ちょうどもうすぐ、
今年の大河ドラマ、蔦屋重三郎さんを描いた
『べらぼう』が終わります。
その次の次の主役
(来年は秀吉・秀長の兄弟)
『逆賊の幕臣』で取り上げられるのが、こちら。
小栗上野介忠順……の
生涯を描いた伝記ですね。
ドラマでは松崎桃李さんが
小栗本人を演じることになっています。
おそらくはあまり、
小栗忠順をよく知っている……という方は
いませんよね。
数多くいる幕末の偉人の中でも、
たいていはほんの少ししか取り上げられません。
幕府側の武士であったことと、
江戸幕府が滅んだ1868年に政府側に逮捕され、
41年の短い生涯で
人生を終えてしまったことが原因でしょう。
しかしながら、じつは
「この人がいなければ、
明治の改革もなかったのではないか」と思えるほど、
幕府側にあって
短い期間に欧米諸国と対峙し、
江戸体制の改革を成し遂げた人物です。
彼が「通貨の交換比率の交渉」
「財政の再建」「洋式軍の整備」「鉄道や港湾」、
あるいは「製鉄所など近代産業の導入」……と
矢継ぎ早に欧米諸国と立ち向かえる国力の
基盤をつくりあげたから、
明治政府は国を乗っ取られることなく、
新しい国家を建設することができたとも
言えると思います。
そのきっかけは1860年、
日米修好通商条約を批准するため、
「目付役」としてポーハタン号で
渡米したことでしょう。
当時まだ30代の役人だった小栗ですが、
アメリカなど世界先進国の実際をその目で見て、
「これはヤバいな!」と痛感したのでしょう。
その後、彼は幕府側の実務的な
交渉人の中心となり、
イギリス、フランス、アメリカといった国と
うまく駆け引きしながら、
日本の優位性を確保していきます。
ところが最後の将軍・慶喜とは意見が衝突し、
隠遁しますが、
危険視した明治政府に捕縛され、斬首。
私が現代語訳した『啓発録』の
橋本左内さんと同様、
その力を十分に発揮できないまま
時代の犠牲者になってしまったわけです。
生きていたら日本の歴史も
変わったのかもしれない。
歴史的な敗者の側にも
素晴らしい人間が大勢いたことを、
私たちは知っておくべきでしょうね。




