幕末の日本人の長所と短所、今はどうなった?

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今日は古典の紹介ですが、
『シュリーマン旅行記 清国・日本』
(講談社学術文庫)という本です。

ハインリッヒ・シュリーマンといえば、
考古学を学んだ人であれば、
誰もが憧れる人ですね。

子供の頃に読んだギリシャ神話の
トロイ戦争の記述に惹かれ、
「実際にトロイの都市は存在した」と信じた。

そこで「いつか古代の都市を発掘するぞ!」と
決めるのですが、
決して裕福な生まれではなかった彼。

そこで勉強するかたわら、
商人としてビジネスで成功し、
19世紀末に自費でトロイの町を発掘するわけです。
発掘方法には現代でこそ問題もありますが、
ギリシャ以前に地中海に存在した
ミケーネ文明の発見に貢献しました。

そんなシュリーマンが、実は幕末の
江戸の町を訪ねていた。
さすが歴史研究者としての
興味だったんでしょうね。
清国から日本へ、
万里の長城、北京、上海、横浜、八王子、江戸と
細かな記述をしていました。

中でも私も好きな港区のお寺、
アメリカ公使館のあった善福寺と
イギリス公使館のあった東禅寺を
細かく書いているのは嬉しいですね。

清の時代の中国人と江戸の時代の日本人。
比べてシュリーマンさんは、
日本人を非常に評価しています。

清潔で礼儀正しく、親切で、高潔。

何よりシュリーマンを感動させたのは、
賄賂やチップのようなものを
日本人が決して受け取らなかったことです。
魂をお金で売り渡すのを恥とするのは、
ヨーロッパ人も見習うべきとしています。

しかしこの国が文明化した国かといえば、
シュリーマンは「NO」としています。
それは民衆が「お上」の命令に絶対で、
厳しい監視下にあることを「良し」としているから。
自由を求めない精神は、
まだまだこの国が文明化していない症候だと
彼はとらえたわけです。

もう1つ、シュリーマンは日本人を
「世界で一番清潔な民族」としました。
なのに一方では、
皮膚病の多さを指摘しているんですね。

彼はその理由を
「生魚を食べるから」と考えていますが、
まさかそんなことはないだろう。

この「皮膚病」、調べるとどうも
「疥癬」というダニが伝染させる病のようです。
確かに江戸の民衆はキレイ好きで、
公衆浴場も発展していたのですが。
その公衆浴場の水自体がじつは感染原因になっていたようです。

この辺、独自の価値観にとらわれ、
効果がいまいち不明な基準を執拗に守るのは、
案外と現代にも通ずるのかもしれませんね。
根本を疑ってみる視点も、時には必要かもです!

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