こんなに戦っていた!……日本の「出版文化」をつくった人々

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夏川が読んだ本の紹介ですが、こちら。

『江戸の本屋さん』
(今田洋三著、平凡社ライブラリー)

70年代の本で決して新しいものではないのですが、
電子版が半額で買えるというので、
つい、購入してしまいました。
普通に買うと2600円くらいですから、
ありがたいですよね。

江戸時代で「本屋さん」といえば、
普通の書店ではありません。
出版社でもあり、ジャーナリズムの担い手でもある。
だからこそ時には、幕府と対立することもある。

なんせ民主主義なんて、
存在しなかった時代のことです。
今のロシアではありませんが、
お上に逆らった出版をすれば、
平気で発禁にされたり、
ときには財産をごそっと没収されたりした。

それでも読者が知りたい情報を提供するために、
あるいは、読者が喜ぶエンターテイメントを
実現するために。
一方では、頑張っている作家や絵師を支援するために、
自らもリスクを覚悟しながら
出版を続けていた「版元」がいたわけです。

とくに印象深いのは、
まず日本橋で出版をしていた
須原屋市兵衛さんという方。

彼は幕府の弾圧覚悟で、
杉田玄白の『解体新書』であったり、
政治学者・林子平の、海外の脅威をうったえた本を
出版しました。
で、案の定、罪にも問われる……。

さらに来年の大河ドラマが決まっている
吉原の蔦屋重三郎さんがいます。

彼も喜多川歌麿らの描いた遊女の絵を、
幕府からの統制覚悟で出版していましたし、
山東京伝さんなどの、
幕府の改革を揶揄した本を出版し、
町人たちに絶賛されていました。

やっぱりこちらも罪に問われるのですが、
手を変え、品を変えで、
新しいヒットを狙い続けたんですね。

一方では、必ずしも皆が高価な本を
買えたわけではない時代。
それでも江戸中には「貸本屋さん」ができ、
大衆に「読む機会」を与えていました。

「貸本屋さん」は版元さんから本を購入しますので、
それによって、まだ無名の作家さんや駆け出しの絵師さんも
商売をすることができたわけです。

その前段階で、版元の経営者は、
作家さんや絵師さんを住み込みで雇い、
生活の面倒も見ています。
日本を代表する画家も、
江戸のベストセラー作家も
そんなふうにして育てられているんですね。

かつて明治のころは、
世界でも有数の読書文化を持っていた日本人。
いまは先進国でも、ワーストに近いくらい
「本を読まない国」になった……という話もありますが、
決してそれはネットのせいだけではない。
私たち出版人の覚悟が、
弱くなったこともあるのかもしれませんね。

歴史を知れば、
本の大切さを改めて感じるようになる!
これからの活動に活かしていきましょう……。

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