古典が教える「正しい勝利」の仕方

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5月8日はロシアがナチスを撃退した
「戦勝記念日」とのことです。

パレードなど準備を進めているようですが、
「国家総動員をする」とか
「ウクライナに大量破壊兵器を使う」とか、
怖い予想もあります。
それでは何を祝うのは本末転倒な気もしますね。

『貞観政要』の時代、
太宗は国を二部した内乱に勝利したのですが、
それをもって「栄誉」とはしませんでした。

敵対していた勢力を統合し、
乱れた国家を平定するための
復興策を立ち上げていきます。

最終的に勝利としたのは、
農業が元通りに実りをもたらし、
戦地となっていた町での商業が戻り、
犯罪者もすべていなくなり
「監獄が空になった」という日をもって。

それだけ国に憂いがなくならないと、
「勝利とは言えない」と考えたわけです。

「戦争に勝つこと」は、
目的ではなく、平和をもたらすための手段。
「その筋道を描けないなら、戦争などするな」
と言ったのは、
この『貞観政要』の時代から
およそ1100年。
ナポレオン戦争の時代を乗り切った、
現在のドイツの軍人・クラウゼヴィッツでした。
有名な『戦争論』ですね。

彼の論には、
「勝利の極限点」という話が出てきます。
難しい言い方ですが、
たとえば現在のロシアのように他国に攻め入った場合、
「勝利している」と見るか、
「敗北に近くなっている」と見るかは、
いくつかの指標を検証しなければならないと述べたわけです。

指標は次のようなものです。

「勝利の目安」
・敵の戦闘力を減らしている
・攻撃者に損失が出ずして、敵のインフラ施設を破壊している
・敵が新しい戦力を投入する手立てを断ち切っている
・敵の持つ資源の一部を獲得している
・敵の命令系統を破壊している
・敵に離反者を出している
・敵の意気が減退している

[敗北の目安]
・多大な兵力を損失し過ぎている
・敵に恨みを買いすぎて、猛攻を受ける対象になっている
・失っている資源を補充できなくなっている
・他国が相手を支援するようになっている
・勝利していることに対する驕りが出ている

「今、戦勝パレードをする」なんていうのも、
まさに「驕り」かもしれません。

いずれにしろクラウゼヴィッツさんに従えば、
何1つ今のロシアは、
ウクライナに対する「勝利条件」を満たせず、
「敗北条件」ばかりが募っていることがわかります。
理屈としては早めに撤退したほうが、
害は少なくなるのではないか。

古典はちゃんと
正しい分析をしているのでしょうね。

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