1年目のクラウゼヴィッツ『戦争論』

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2月24日で、ウクライナの侵略戦争が始まってから
ちょうど1年だそうです。

「よくウクライナが持ちこたえた」と言うべきなのか。
「まだプーチンさん、諦めないの」と言うべきなのか。

いずれにしろ戦争が長く続くことは、
グローバル化した世界にとってよくないですよね。
もっと本気で早く集結させる方法を
世界は考えなければいけないのではないか。

ちょうど1年前に戦争が始まり、
それから持ち上がった企画が、
クラウゼビッツ『戦争論』の現代語訳でした。

200年前に書かれた本書ですが、
それでも戦争を俯瞰するのに
この本の著述は非常に参考になります。

たとえば侵略軍の力が増加する要素。
①敵戦闘力を著しく減少させる
②敵領土インフラの損失
③防御側の領土の損失
④攻撃者により敵資源の獲得
⑤敵の組織系統の崩壊
⑥敵の同盟者の裏切り
⑦敵の指揮の消沈

毎日のようにミサイルを降り注ぎ、
市民まで含めた大量の増員を送り
ウクライナの倍とされる戦死者を出し、
また国際社会から非難される虐殺まで決行しながら、
1年経って侵略したロシアが成し遂げた戦果は
南側の一部地域で
②と③を実現しているに過ぎないわけです。

クラウゼビッツ流に言うなら、
常に不利な立場にある「攻撃』がもつわけもありません。
長引き、ジリ貧になるのも当然でしょう。

ただ問題は、『戦争論』でも説かれている
「戦争の情動的な部分」です。

「たとえ敵対関係が薄かったとしても、
戦闘が始まれば、
憎しみの感情は盛り上がっていく。
というのも、敵兵が上官の命令に従って
暴力を行使したとしても、
私たちが復讐心を燃え上がらせるのは、
真っ先に暴力を行使した当人なのである」

たとえばよく日本は表面上、
戦後はアメリカへの復讐心を抑えたのですが、
いまだ中国や韓国には、
日本に復讐心を持つ人々がいる。

戦争は確かに国が勝手にやることで、
今の人間とは関係もありません。

それをわかってはいるけれど、
戦争が長引けば長引くほど、
犠牲者が増えれば増えるほど、
人間は情動的に「相手の存在そのもの」を
憎むようになっていくわけです。
戦争の本当の恐怖は、こういうところにあります。

だから戦争が長引けば長引くほど、
ウクライナの側はよりロシアを憎むようになるし、
結果的に平和から遠ざかってしまうことにも
なりかねない。
「落ち着けよ」と言ったって、
当事者の苦しみを周りでわかるわけもない。

これからは周りが常に冷静になり、
戦争が長引かない道を模索していく
必要があるのではないか?
クラウゼビッツの理論から導かれるのは、
そうしたことではないかと思います。

まあ、あの時代は平気で30年とか、
戦争が続いていたわけです。
そのころ以上には世界も成長した存在で
あってほしいですね。

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